― 理学療法士の立場から ―
「良かれと思って言っているのに、逆効果になってしまう」
リハビリの現場では、そんな場面をたくさん見てきました。
ここでは、
家族がついやってしまいがちな声かけと、
少し視点を変えた代替案を紹介します。
NG①「歩けなくなっちゃうよ」「このままだと寝たきりだよ」
これはとても多い声かけです。
でもこの言葉は、本人にとって
- 怖さを強める
- 責められている気持ちになる
- コントロールされていると感じる
ことがあります。
特に、
「寝たきりになったら困る」
という家族側の不安が透けて見えると、
やる気は下がりやすくなります。
代わりにできる声かけ
- 「今できていることを、続けるためにどうしようか」
- 「これができたら、○○に行けそうだね」
👉 恐怖ではなく、希望に目を向ける。
NG②「リハビリちゃんとやったの?」「まだやってないの?」
進み具合を確認しているつもりでも、
本人には「監視」や「評価」に感じられることがあります。
特に体力が落ちている時は、
やろうと思ってもできなかった自分を
さらに責めてしまうことも。
代わりにできる声かけ
- 「今日はどんな一日だった?」
- 「できたこと、何かあった?」
👉 結果よりも、過程や気持ちに目を向ける。
NG③「みんなやってるよ」「やらないと良くならないよ」
正論ほど、人は動けなくなります。
本人がまだ受け身の状態のときに
正しさをぶつけると、
- 反発
- 諦め
- 思考停止
につながりやすいです。
代わりにできる声かけ
- 「どれならできそう?」
- 「今日は少しでも動けそう?」
👉 選択肢を渡して、決めるのは本人に。
NG④「そんなに動かなくて大丈夫なの?」
心配の気持ちから出た言葉でも、
本人には
「ダメな自分」とレッテルを貼られたように
感じることがあります。
代わりにできる声かけ
- 「疲れやすくなってるんだね」
- 「無理しないで、できるところからでいいよ」
👉 否定せず、今の状態を受け止める。
NG⑤「昔はもっと動けたのに」
過去と比べられる言葉は、
本人の自尊心を大きく傷つけます。
特に高齢期では、
「できなくなったこと」への喪失感が強いため、
意欲を下げやすい声かけです。
代わりにできる声かけ
- 「今の体で、何ができそうか考えよう」
- 「前よりゆっくりでも、できてるね」
👉 比べるなら、過去ではなく“昨日の自分”。
大切なのは「動かせること」ではない
家族の役割は、
無理に動かせることではありません。
- 本人の気持ちを知ろうとする
- 怖さや不安に共感する
- 選べる余地を残す
それだけで、
「やってもいいかな」という気持ちは
少しずつ育ちます。
それでも難しいときは、家族だけで抱えないで
どうしても動き出せない場合は、
- 訪問リハビリ
- デイサービス
- 医療職への相談
家族以外の関わりが、
大きなきっかけになることもあります。
家族が悪いわけでも、
本人が怠けているわけでもありません。
最後に
リハビリは、
「正しいことを言った人が勝ち」ではなく、
本人が納得して選べたかどうかが大切です。
声かけを少し変えるだけで、
関係も、行動も、変わることがあります。
これは、
日々たくさんの高齢者と向き合ってきた中で、
私が実感していることです。
次回は「過保護が動けなくなる原因になることも?」について
実は、
「心配だから」と家族が何でもやってくれるようになり、
結果的に動く機会が減ってしまうケースもあります。
これは決して家族が悪いわけではなく、
気づかないうちに起こりやすい“もったいない変化”。
この話は、また次回あらためて書こうと思います。
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